みなとの風景

 「みなとの風景」は私が現在取り組んでいるテーマです。船泊り、船溜り、湊、港などと表現される、船の停泊するところですが、ここではその周囲の建造物や・町並み、風物なども含めて「みなと」と総称することとします。

 船はどんな船でも絵になる要素があると思います。商業港、工業港もそこには人の営みがあり、クレーンや専用船の形なども種類が多く面白いと思います。オシャレなヨットなどが舫うマリーナも魅力的です。タグボートなど港湾管理の高速船は白波を立てて走る姿が非常に美しく、重い荷物を満載して川や運河を曳航される団平船も。しかし、東京の湾岸などへは滅多に行かないため。実際に走っている姿を見る機会は殆どありません。

 小さな漁港や揚船場に引き上げられた小型漁船は格別好きなモチーフです。子供の頃にタイムスリップしたような「みなと」を探していますが、情報が少ないため難行しております。Netでグーグルマップの航空写真やストリートビューを活用することが多いのですが、ストリートビューのカバー範囲が広くなり、こんな辺地までと驚くほどです。現地の情報が少ないだけに行ってみてがっかりすることも多いのですが、期待を超える景観に出会った時の感激はまたひとしおです。

 世界各国の200海里漁業専管水域(1982年国連海洋法条約による排他的経済水域)の設定によって遠洋漁場が狭められ、さらに近海・沿岸では乱獲による漁獲高減少もあり、地方の港町や漁村の過疎化が急速に進みつつあります。少子高齢化に加えて、若者の都会への流出に歯止めが掛からない状況が続いております。このままでは廃村になる漁港があっても不思議ではないと思われます。今のうちに「懐かしい風景」としてだけでなく「失われゆく景観」としても描いておきたいという思いが強くなりました。